立ち読みのススメ

元来の落ち着きのなさのせいか、それとも、抗精神病薬の副作用 アカシジアのためか、容易に原因を特定することはできないけれど、椅子にじっと坐って本を読むのが困難になった。したがって、書斎の中でも、立ったり、歩いたりしながら、本を読むことになった。——つまり、立ち読みである。すると、どうだろう。私の肉体と精神に思わぬ変化が起こった。

まず、眠くならない。体を揺すったり、踵を浮かせて、小刻みに歩き回るので、睡魔に襲われる隙がない。また、腰痛、座骨神経痛になる心配からも解放されている。整形外科の先生が言っていた。「坐ってはいけない。立つのが一番身体にいいのだ」

また、神経ないし精神にも嬉しい影響があった。立ち読みすることにより、思考が活発になるのである。行を追いかけるスピード、頁をめくるスピードが、1.5倍、もしかすると、2倍くらい向上したのではないか。生理的律動リズムにおいて、肉体と精神は連動している。私は今まで遅読であったが、意外な方法で速読が可能になった。思えば、書店でチンタラ立ち読みしている人はいない。客はすばやく行間に目を走らせて、買うべきか否かを判断する。

立ち読みのついでに、立ち書きもできないか、試してみたが、私の机はスタンディングデスクではない、ごく普通の文机なので、すぐに腰が痛くなってやめた。しかし、いつか部屋の間取りに余裕ができたら、導入を検討したい。TeXの開発者のドナルド・クヌースも立ってコードを書いているではないか。