椅子

書斎の椅子を台所用の折りたたみ椅子に変えた。それまでの書斎用の椅子は会社の寮を出て、所沢で初めて一人暮らしをしたときに買った椅子だ。19歳の開高健は家出して、女の家に転がり込むときに愛用の机を持参して行ったらしいが、机と椅子というのは、家族から離れて、自分一人の生活を送るためには絶対に必要な備品だと思われる。それだけ思い入れは深くなるけど、一人暮らしを始めて10年がたつ。私の体と心が疲れ切って、くたびれているように、椅子も限界なのだ(机はデスクマットを敷いて、傷つけないようにしているので、当分使えそうである)。座高を調節するシリンダーのガスは抜けているし、背もたれは後傾している。かくて、6,000円のキッチン・チェアに席を譲ってしまったのであった。

椅子を変えたら、適切な座高で足元が安定したのか、圧倒的に打鍵タイピングしやすくなった。タイプミスが減ったのである。社会人になって以来、キャスター付きのコロコロのオフィス・チェアが当たり前になってしまったが、足を引く癖のある私にはいまいち合わなかったらしい。案外、小学生、中学生、高校生が教室で坐っているような、素朴な木組みの椅子が、机仕事と相性がいいのかもしれない(そういえば、小学校でもパソコン室の椅子だけはコロコロのオフィス・チェアである。これには何か理由があるのだろうか)。思えば、ピアニストの椅子は座高の調整ができるだけの黒塗りのシンプルな椅子である。ライターやプログラマーは長時間坐っているので、椅子にこだわる傾向があるが、常識に左右されずに自分に合った椅子を選んでみてはいかがだろうか?

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